国連児童基金の前身は、第二次世界大戦が終わった直後の1946年に設立された、国連児童緊急基金です。
当時は戦争によって荒廃した国々が世界中に広がり、人道レベルでの経済援助を必要としていました。
特にそのような国々の子どもたちが置かれた状況は深刻さを極め、食料を中心に緊急援助が必要になります。
そこで設立されたのがこの基金です。
ユニセフの通称でも知られる国連児童基金
初期の段階では脱脂粉乳や医薬品の供給、そして健康管理などの援助を実施していましたが、徐々に活動範囲を拡大して、現在の国際連合児童基金へと発展しました。
ユニセフの通称でも知られるこの基金は、人道援助はもちろん開発機関としての性格も強く、世界中で苦しむ子どもの生存と保護、そして発展の権利を守ることを任務の主な目的とします。
したがって活動するエリアも必然的に開発途上国が中心となり、そこで生きる子どもや母親などを対象に、長期にわたる人道援助や開発援助を実施しています。
その際には日本ユニセフが単独で行動するのではなく、「子供の権利に関する条約」を活動の指針としながら、様々な国際機関をはじめ政府や市民社会との連携や協力のもとで活動します。
そして貧困や紛争等によって恵まれない子どもたちやその家族が本来有する、権利の保護に努めます。
子供の権利に関する条約
その中でも特に暴力や搾取あるいは虐待などに直面している、緊急性の高い子どもたちに対しては、直ちに保護する環境を構築して、子どもを被害から守ります。
ちなみに「子供の権利に関する条約」は主に4つのパートから説明することができます。
■子どもの権利条約
まず1つめは子どもの権利条約について。
これは子どもにも基本的人権が保障されるべきことを、広く国際的に規定した画期的な条約です。
ユニセフではこの条約に定められた子どもの基本的人権の実現を目指し、その実現を使命として活動を継続します。
この条約には政府向けの条約全文の他、子ども向けの解説と条文抄訳が明記されています。
また締約国リストや選択議定書も盛り込まれています。
選択議定書には子どもの売買、子ども買春および子どもポルノグラフィーに関する子どもの権利条約の選択議定書。
武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書などが記載されています。
■子どもの権利を基盤としたアプローチ
活動指針の2つめのパートは、子どもの権利を基盤としたアプローチです。
ここでは子どもの権利を基盤としたアプローチや、子どものライフサイクルに合わせたアプローチ等を提起します。
子どもにはライフ・サイクルの過程で配慮すべきことや、必要なことをすべき、適切な時期やタイミングがあり、それぞれに見合った最適な総合的支援を実行し、より大きな成果を生むことを目指すとしています。
■ユニセフの戦略計画
3つめのパートではユニセフの戦略計画を紹介します。
計画全体的に共通した概念としては、あらゆる立場に置かれた、世界中の子どもの権利実現を目指します。
特に最も過酷で恵まれない環境にある子どもたちについては、積極的に権利の実現に努めます。
ちなみに2018年~2021年の戦略計画では、「生存と成長」「教育」「子どもの保護」「水と衛生」「公平な機会」の5つの分野を、焦点としています。
さらにそれらの分野を横断するように、ジェンダーの平等や人道支援といった優先課題を提示します。
■持続可能な開発目標(SDGs)
最後の4つめのパートは、持続可能な開発目標(SDGs)です。
これは2000年に国連で採択されたミレニアム開発目標(MDGs)を、2015年の国連持続可能な開発サミットで受け継いだものです。
ここではSDGs採択前から継続する公平性のアプローチ「誰ひとり取り残さない」を重視しながら、17の目標と169のターゲットを掲げます。
この開発目標にはMDGsで達成できなかった課題や、MDGsには含まれていなかった課題、さらに新たに浮上してきた課題などを包括的に含んでおり、先進国も途上国も取り組むべき普遍的な目標として周知されています。
ユニセフには世界中に直属機関や協力機関が存在する
このような目標や課題を達成するべく、ユニセフには世界中に直属機関や協力機関が存在します。
まず本部はニューヨークに所在します。
ここでは基本方針や開発戦略あるいは各援助事業方針の作成をしたり、現地事務所との連絡および調整を行います。
スイスのジュネーブにあるユニセフ・ヨーロッパ事務所では、先進33カ国にあるユニセフ協会(国内委員会)との接渉等を行っています。
またデンマークのコペンハーゲンに所在するユニセフ物資供給センターでは、支援物資の買付けや保管そして発送等を任務としており、ここから世界各国で苦しむ子どもたちへ物資が供給されます。
イタリアのフィレンツェにあるイノチェンティ研究所では、世界の子どもが置かれた状況の把握や分析さらに情報の発信を、主な業務としています。
まとめ
そして日本のユニセフ東京事務所は東京都渋谷区に所在し、日本政府をはじめとする政府系パートナーとユニセフをつなぐ、窓口として機能します。
同時に、超党派の国会議員で構成されるユニセフ議員連盟のアドボカシー活動についても、積極的な支援を展開しています。