⒈実業家にも種類があり役目がある
実業家というと、経営者や事業者をイメージするのが一般的ではないでしょうか。
いずれもなにがしかの事業を運営、または経営している人という意味で間違いありませんが、正確には実業をおこなっている人、つまり農業・商業・工業・水産業といった実業といわれる事業の生産や販売を手掛けている人ということになります。
実業の反対が虚業で、虚業とは投機的で堅実でない事業、怪しげな事業のことをさします。
虚業という言葉はあまり聞いたことがない、という人もいるかもしれませんが、実際に事業を営む人がどの立ち位置で経営をしているかによって実業になるか虚業になるかが決まります。
物を生産、販売したり、サービスを提供することで収益を得るのが事業活動ですが、その事業が社会や周囲の人々にプラスの価値を与えることを目的にしているのが実業です。
お金を儲けるとはそういうことじゃないの、といわれそうですが、中には社会や周囲を欺いたり偽ることで収益を得ようとする人もいます。
こういったことを目的におこなわれるのが虚業で、実業とは相反するといえます。
例えばですが、誰でもお金を儲けることができます、といったような謳い文句で出資者を募り価値のない商品を売りつけようとしたり、先に代金を受け取って宣伝とは違う商品を売りつけて逃げてしまうなど、ほとんど詐欺行為ともとれるような事業は虚業だということができます。
⒉それぞれの役目と違い
実業が周囲にプラスの価値を与えることを前提とした事業だというのは分かりましたが、実業家と起業家、また企業家との違いはどこにあるのでしょうか。
実業家とは実業を営む人全般をいいますが、起業家は新しく事業をおこして経営する人のこと、また新しく事業をおこすことを専門にしている人を称して使用されるようです。
既存のシステムがなにもないところから新しいものを創り、リスクを承知しながら不確実性を受容して挑戦し、ある程度市場に認められるまでにする、それが起業家で、昨今はベンチャー企業の事業主に使われることも多いようです。
同じ発音の言葉に企業家がありますが、企業家は企業の経営や運営に取り組む人という意味で使用されます。
アメリカの経営学者によれば企業としての先々の展開方法まで見据え、よりアクティヴに経営を進めていく精神を持つ人が企業家で、企業にあって新製品の開発や販売促進の方法、新技術の導入などを運営、指示することで先々の事業の発展を踏まえた経営に主軸を置く人のことをさしています。
では経営者とはどんな人のことをいうのでしょうか。
なんとなく今まで説明してきた人たちと似たようなイメージがありますが、簡単にいうと経営者とは企業にあって事業を運営する人、あるいは運営を指示できる権限のある人ということになります。
つまり実業家や企業家、起業家は事業の運営に携わっている経営者の種類になるわけで、事業家の種類だともいえるわけです。
⒊事業を成功させるための準備が重要
国内外を問わず世界にはいろいろな経営者がいますが、比較的よく知られている経営者は、どのタイプに分類されるのでしょうか。
日本人なら多くの人が名前を聞いたことがある電機メーカーの創始者で経営の神様といわれた人物は、その経営手腕で一代で事業基盤を整え大手メーカーに成長させたことから起業家と呼ぶにふさわしく、世界的に知られているインターネット関連製品を販売している会社の共同設立者である人物ならば、常に新しい製品と話題を市場に提供し続けていることから企業家というに相応しいといえます。
また歴史の教科書に出てくる日本資本主義の父とも呼ばれる人物や、財閥を築いたような人物であれば、起業家や企業家の枠を超えて大実業家と呼ぶに相応しいといえるのではないでしょうか。
それでは実業家になりたい、目指しているといった人はどんな準備をすればよいのでしょうか。
事業を経営するには特に資格や免許が必要ないので誰でもなれそうですが、だからこそかえって難しいといえます。
過去において起業家や企業家として成功した人の経験や経歴からいえることは、まず周囲を巻き込む強烈な意志と明確な理由があるかどうかということです。
なんとなく起業したい、事業運営に携わりたいのではなく、人のためになるものを作りたい、これを作ればきっとヒットするなど、どんな困難にあっても最後まで成し遂げてみせるという強い意志があることです。
そういった明確な意志があって初めて自分がなりたい経営者像を明確にできますし、事業運営に必要な勉強で得られる技術やスキルを活かすことができるのです。
どれだけ知識が豊富でも、明確な意志やビジョンがないと事業を成功させるどころか起業することも危うくなるかもしれません。
次に大切になるのが起業するための資金集めです。
資金が集められないと事業を始めることができないだけでなく、継続も難しいといえます。
資金を集められる手腕があるかどうかは岡野保次郎氏のような起業家として、また企業家として成功するかどうかの分かれ道になるといえます。