有給休暇の取得はこれから義務化される

●日本の職場では有給を使うことに罪悪感を感じる人が多い

生きていくためには、仕事をして収入を得ていかなければいけません。
でも仕事だけをしていけばいいのか、というと働きづめで休みがなければ心身ともに疲労して最悪の場合には死に至ります。

会社は労働者に対して、法律で決められた労働時間の条件内で仕事をさせるわけですが、労働者の権利として雇い入れから6か月以上経過し、8割以上の出勤率であれば有給休暇を使えることになっています。

この権利を使えば休みながらも、賃金が支払われるというもので、どのような目的に使ってもよいことになっており、会社は事業の運営に支障をきたすときだけ時期の変更が出来るというものです。

旅行や趣味のイベントなど労働者は自由に使える貴重な休みで、誰もがその恩恵をうけるべきなのですが、現実はそういうことになっていません。
というのも、日本では職場の同僚たちが働いているのに自分だけが遊ぶことに抵抗を感じる空気があります。

また周囲の人間も、忙しいのに休んでいる人に対して感情的になる傾向があります。
ですから本来ならば権利を行使することは当然のことであるのに、我慢して働き続ける人が多いのです。

●簡単に有給休暇を取れないことが社会全体の問題に

特に介護や看護など辛い労働をしている現場や経営の問題でリストラが行われている会社などでは人手不足となっており、誰かに休まれるとそのしわ寄せが及びます。
そういうこともあって簡単に有給休暇を取れないことが社会全体の問題となっています。

調査によると休める最大限の日数まで有給化を使っていない人は40%以上、業界によっては60%以上です。
休めない分は無駄になっているのかというと、未消化分は会社に買い取ってもらえる制度もありますが、最初から会社が買い上げることを前提とすることは違法です。

さて、日本におけるこの状況は、世界的に見てどうなのかというと、フランスやオーストリアでは有給休暇が100%使われています。
アメリカやイタリアでも80%以上ですから、かなり悪いといえます。

●有給休暇の義務化が始まる

このように労働者の権利を行使できないことは大いに問題であるということで、有給休暇の義務化が始まるのです。
対象となるのは年に10日以上の有給休暇が付与される労働者です。

これは正社員だけでなくパートなどの非常勤でも条件を満たせば付与される日数です。
対象の労働者が最低でも年に5日以上は消化出来るようにすることを会社側に義務を課すことで低い取得率を改善しようという狙いです。

参考記事:有給休暇の義務化!5日以上取得は2019年から!企業の対応を解説

義務化についての法律は平成30年4月に開催された通常国会で可決され、施行日は平成31年4月1日からの施行となります。
もしこの法律に違反したときには会社に30万円以下の罰金が科せられます。

金額が少ないように思えるかもしれませんが、この罰則が労働者1人ごとに適用されるのであれば、大企業になれば休ませないと相当な負担となりますから会社全体で義務を果たすようになることでしょう。

●果たして労働環境は本当に変わるのか?

ただ、これで本当に働く環境が変わるのかということで疑問も出ています。
というのも労働者を酷使している会社では、記録を残さず働かせるサービス残業が普通というところもあります。

いわゆるブラック企業と呼ばれる会社ですが、そこはいくら義務化がきまったとしても、記録上は休ませていても実態には出勤を強制させる可能性があります。

法律だから守れというだけで、誰もが法を犯さないのであれば苦労はしません。
すべての企業が法を守っているのかを監視し、違反があれば即座に罰することができなければ骨抜きの内容となります。

それに加えて肝心の労働者に有給休暇が義務化されるという話が浸透していないことも課題です。
休まなければいけないということを知らないと、これまでと同じく我慢をしつづけるかもしれないからです。
法が施行された後に、会社と労働者で変化が出てくるのかを注視しなければいけません。